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コラム

弁護士 本杉明義のコラム

第5回 企業自衛のための内部告発制度

 

  1. 「内部告発制度」というと経営側の方々はどのようなイメージをお持ちでしょうか。おそらく多くの方が「反逆行為」とか「裏切り行為」といった後ろ向きなイメージがあり、設置に二の足を踏むのでしょう。しかしながら最近の企業不祥事の発覚の殆どが内部告発によることからも分るとおり、今後、企業が内部告発をどのように取り扱うかはリスク管理対象の一つとして極めて重要です。内部告発者保護法の制定の動きに見られるように、内部告発を正当な行為と評価する環境が整いつつあり、また社員の会社に対する忠誠心がなくなり、リストラによる私怨を晴らすために内部告発するといったことも十分に考えられます。そこで私は、ますます利害得失入り乱れた環境の中で、企業が自衛策として内部告発制度を積極的に設置していくことをお勧めします。

  2. まず企業に内部告発制度が設置されていない場合、不正告発はどのような経路を辿るでしょうか。身近なところでは消費者生活センターや監督団体に情報提供するといったところでしょうが、内容が極めて重要であれば直接マスコミにリークして取り上げてもらうことも考えられます。しかし実際にマスコミが取り上げた後に事態の収拾を図ることは殆ど絶望的に困難です。その場合、企業は存続の危機に瀕する程の致命傷を負うことになるでしょう。そこで先ず企業が内部告発制度を設置して自浄作用を図るべきです。勿論、内部告発制度を実効あらしめるためには形式的に設置しているだけでは不十分で(例えば設置はしているが、情報提供が殆ど無いのでは意味がない)、内容のある内部告発が定期的に行われる必要があります。そのためには第一に告発者の保護を徹底する制度作りが必要になります。

  3. 次に内部告発制度を設置することで、社員同士が監視し合う体制作りが可能となります。人間は誰しも悪事に手を染める可能性があるのであって、不正行為を犯す社員が特別な人間だとは限りません。これまでは監査部、検査部が定期検査で不正行為を防止していたわけですが、事後的検査での発覚では手遅れになる可能性がありますし、内部告発制度を併用して不正行為の抑止効果が期待できます。

  4. さらに内部告発制度で得られた情報は、企業の内部に潜むリスクをいち早く掴むという意味で経営側にとっても重要なアンテナの意味を持ちます。よく顧客からのクレームが企業の「マーケティングの宝庫」と言われるように、社員からの内部告発情報は組織としての健全性を検証する重要な情報の宝庫となるでしょう。

  5. 以上、これからの企業が自衛のため内部告発制度を設置する必要性を述べましたが、情報提供の窓口を何処にするか(弁護士か専門業者か内部か)、どのような形式で情報提供を受けるか(電話かメールか)、提供を受けた情報をどのように取り扱うか(情報の保管方法、企業へのフィードバックの方法)、対応を必要とする場合はどうするか(弁護士への相談、マスコミ対策、株主代表訴訟対策等)については弁護士等の専門家と十分に協議・検討して下さい。実効性のある内部告発制度を期待しています。
 

平成15年9月
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