1 金融商品取引法が平成19年9月30日から全面施行されることになりました。同法は、内閣府令、施行令も合わせて、投資勧誘に関わるルールをきめ細かく規定しています。以下、投資勧誘に関わるルールについて具体的に説明します。
2 適合性原則
「顧客の知識、経験、財産の状況及び契約締結の目的に照らして不適当と認められる勧誘を行なってはならない」(金商法40条)と規定されています。金融機関は、顧客から知識、経験、財産の状況、取引の目的をヒアリング等で十分に把握し、顧客の実情に合った金融取引を選定して勧誘を行なわなければなりません。この原則に違反した場合、金融機関が業務改善命令や行政処分の対象となったり、顧客が被った損害について賠償請求の対象ともなります。金融機関としては、これまで以上に顧客の属性把握に努め、当該取引が顧客に適合すると判断した理由を文書で残す等の工夫が必要と思われます。
3 説明義務
@ 説明義務の対象となるのが、@市場リスク、A信用リスク、B取引の仕組みのうちの重要な部分、C顧客の判断に影響を及ぼす重要事項として政令が指定した事項、D期間の制限です(金販法3条1項、同5項)。B取引の仕組みのうちの重要な部分が、今回の改正で追加された部分です。取引の仕組みうち「重要な部分」が何を指すのか明確ではありませんが、顧客が当該取引のリスク・リターンを比較考量して投資判断を行なうことから、当該取引のリスク・リターンに関わる仕組みは「重要な部分」に該当すると考えられます。
A 説明義務の方法及び程度として、「顧客の知識、経験、財産の状況および契約締結の目的に照らして、当該顧客に理解されるために必要な方法及び程度によるものでなければならない。」(金販法3条2項)と規定されています。顧客の属性及び当該金融取引の内容に照らして説明義務を尽くす必要があるので、どのような方法で説明するか(電話か面談かインターネット表示か等)及びどの程度説明するか(説明の時間・回数、シュミレーション取引といった具体的な説明等)に留意する必要があります。理解度が一般的に低い顧客の場合(高齢者、低学歴、無職等)、デリバティブ型取引のように商品内容が複雑・難解な場合、高リスク商品の場合は特に注意を要します。金融機関は、図、表、グラフ等を利用した視覚的な説明、文字のポイント数が大きく、分かり易い体裁の説明書、取引前にシュミレーションを実施する等して、顧客が理解できるような説明を尽くす必要があります。
4 その他の規制
@ 広告等の規制(金融商品取引法37条)
広告のみならず広告類似行為(業府令72条によれば、郵便、信書便、FAX、電子メールまたはビラ、パンフレット配布その他の方法で多数の者に同様の内容で行なう情報提供)も規制の対象となります。表示内容は施行令16条に細かく規定され、表示方法は明確かつ正確な表示、リスク情報は最大の文字・数字と著しく異ならない大きさで表示と規定されています(業府令73条)。
A 契約締結前の書面交付義務(金融商品取引法37条の3)
書面の記載事項は、法37条の3の1項及び業府令81条以下に規定され、書面の記載方法は、所定の重要事項及びリスク情報等は12ポイント以上、その他の事項も8ポイント以上で明瞭かつ平易に記載しなければならないと規定されています(業府令79条)。書面は原則として契約締結までに交付しなければならず、広義の説明義務の一内容と考えられます。また過去一年以内に同種取引の書面が交付されている場合等、義務が免除される場合があります(業府令80条)。
B その他いわゆる「クーリングオフ」(金融商品取引法37条の6)は施行令16条の3の1項で投資顧問契約のみに限定され、不招請勧誘禁止は店頭金融先物取引に限定され(施行令16条4の1項)、再勧誘禁止は国内・国外の金融先物取引に限定されていますが(施行令16条の4の2項)、他の禁止行為(虚偽事実の告知、断定的判断の提供、誤解を招く勧誘、法38条)は金融取引全般に及びます。
5 特定投資家と一般投資家の区別(いわゆる「プロアマ規制」)
金融商品取引法によって新しく取り入れられた区別であり、その理解は重要です。第1に、投資家を4つに区分します。すなわちまず特定投資家と一般投資家で区別し、特定投資家でも一般投資家に移行可能な投資家と移行不可能な投資家に区別し、一般投資家でも特定投資家に移行可能な投資家と移行不可能な投資家に区別します。そして適格機関投資家、国、日本銀行が一般投資家に移行できない特定投資家(法2条31項1〜3号)、地方公共団体、政府関係機関、上場会社、資本金が5億円以上の株式会社が一般投資家に移行可能な特定投資家に該当します(法2条31項4号、定義府令23条)。次に特定投資家以外は一般投資家で、法人及び負債を除いた資産額の合計が3億円以上で当該金融取引を締結してから1年経過している者等の特定の個人が特定投資家に移行可能な一般投資家、それ以外は特定投資家に移行不可能な一般投資家に該当します。第2に、特定投資家から一般投資家への移行手続、一般投資家から特定投資家への移行手続を理解する必要があります。まず特定投資家から一般投資家への移行手続ですが、金融機関が予め移行申出が可能である旨を告知し(法34条)、投資家は契約の種類毎に移行の申出が可能です(法34条の2の1項、業府令53条)。金融機関は、移行の申出があった場合、原則として承諾しなければならず、承諾した場合、投資家に書面を交付する義務があります。次に一般投資家の特定投資家への移行手続ですが、法人の場合、契約の種類毎に移行の申出が可能であり、移行について書面による投資家の同意が必要で、金融機関が承諾するか否かは任意です。個人の場合、やはり契約の種類毎に移行の申出が可能であり、金融機関は移行可能な投資化であるための要件を充足することを確認し、承諾は任意ですが、承諾した場合、書面を交付する義務があります。また書面による投資家の同意が必要です。第3に、特定投資家に該当する場合、金融機関は、広告規制、不招請勧誘禁止、勧誘受諾確認義務、再勧誘の禁止、適合性原則、取引態様事前明示義務、契約締結前の書面交付義務、契約締結後の書面交付義務、書面による解除等の適用を受けません。特定投資家であっても、誠実公正義務、虚偽告知の禁止、断定的判断の提供、損失補てんの禁止等の適用は受けます。
6 以上、金融商品取引法の投資勧誘に関するルールを簡単にまとめましたが、詳しくは顧問弁護士等にお尋ね下さい。
以 上